【ルネサンス美術】西欧絵画の「古典」有名な作品や画家を解説します。

こんにちは!絵描きの川原です。

 

アクリル絵の具で描いた作品

FINAL FANTASY Ⅸ 禁断の地 ウイユヴェール

 

今回は【ルネサンス美術】についてお話していきます。

「イタリア・ルネサンス期」は初期フランドル期と重なっていますよ!と
前回の記事で少しお話しました。

これには初期フランドル期の前である、ゴシック期(チマブーエ1260年頃)から始まっていた場合とマサッチョの1401年頃に始まったとされる見解もあります。

しかもルネサンス美術はオリジナルの古典作品ではないのです。

ではルネサンス美術の特徴や画家たちを解説していきます!

 

 

ルネサンス美術とは?

 

15世紀初頭からイタリアを中心に興った芸術運動のことをいいます。

ルネサンスはフランス語で「復興、再生」という意味で、
ギリシャ・ローマ時代の古典作品を模したものなんです。

では何の「復興・再生」かと言うと、中世キリスト教社会に抑圧されてきた古代ギリシャ・ローマ文化の「復興・再生」でそれをルネサンスと呼ばれました。

つまり古典の復興・再生という事なんですね。

古代文化の復興は、中世期に長い時間をかけ準備され、15世紀のイタリアに開花したに過ぎないのです。
またこの時代の絵の題材は宗教的なものがほどんどを占めていました。

ルネサンス美術を支えたのは、メディチ家、新興商人だけでなく最大のパトロンで中世と同じく「カトリック教会」でした。

描かれた作品も、ギリシャ神話の裸体画より、キリスト教の宗教画の方が圧倒的に多かったです。

ルネサンス絵画とは【古代の肉体表現とキリスト教美術の融合】と、捉えたほうが理解しやすいです。

ルネサンス期は30年という非常に短い間に、素晴らしい才能を持つ画家が登場してきます。

ルネサンス3大巨匠として

レオナルド・ダ・ヴィンチ
ミケランジェロ
ラファエロ

など有名な画家たちです。

 

メディチ家とは?

メディチ家はルネサンス期のイタリア・フィレンツェにおいて銀行家、
政治家として台頭していました。

フィレンツェの実質的な支配者で、後にトスカーナ大公国の君主となった一族のことです。

その有り余る財力でボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ヴァザーリなどの多数の有名芸術家をパトロンとして支援していました。

歴代の当主たちが集めた美術品などはウフィツィ美術館などに残されました。

 

安定した構図の写実性と立体感


ルネサンスが開花した街は、フィレンツェです。

14世紀にはダンテの『神曲』とジョットの絵画、15世紀初頭には建築家ブルネレスキと
彫刻家ドナッテロ、画家のマサッチョの『初期三巨頭』がルネサンスの開幕を宣言しました。

サンドロ・ボッティチェリらを経て、レオナルド・ダ・ヴィンチ、
ミケランジェロの《盛期ルネサンス三大巨匠》へと続きます。

巨匠たちが確立したルネサンス絵画の特徴

・古代ギリシャの解剖学とリアルでバランスの取れた肉体表現
・油絵の陰影法と科学的遠近法を駆使した立体感と奥行き感
・円や正方形、正三角形など左右対称で安定した構図

という感じですね。

ビザンティンの平面的な表現やゴシックのひょろ長さは消えて、
古代の神々の他キリストや聖母マリアまでもが、肉感あれる体躯で描かれました。

写実性と立体感で古代ギリシャ・ローマを超えたルネサンス絵画は、
西欧絵画の新たな「古典」として、続く時代のお手本となりました。

ルネサンス絵画は線遠近法と空気遠近法を科学的に確立し、深い奥行き感を実現させました。
西洋絵画の空間に革命をもたらしました。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ【聖アンナと聖母子】(1508年‐10年) 油彩 パリ ルーヴル美術館

 

ルネサンス美術の有名な画家

 

サンドロ・ボッティチェリ

サンドロ・ボッチィチェリ(1445年‐1510年5月17日)

イタリアのフィレンツェ生まれの画家で、
本名はアレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーリといいます。

初期ルネサンスの最盛期に最も業績を残したフィレンツェ派の代表画家です。

ボッティチェリは『春(プリマヴェーラ)』や『ヴィーナスの誕生』の作者として有名です。

 

【春(プリマヴェーラ)】1478年 テンペラ フィレンツェ、ウフィツィ美術館

 

【ヴィーナスの誕生】1485年 フィレンツェ、ウフィツィ美術館

 

【東方三博士の礼拝】1475年 フィレンツェ、ウフィツィ美術館

 

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年4月15日‐1519年5月2日)

レオナルド・ダ・ヴィンチは知らない人はいないほどの超有名な画家ですね。

芸術や絵画の分野以外にも・・・
建築、数学、解剖学、生理学、植物学、天文学、気象学、地理学
地質学、物理学、光学、力学など様々な分野で功績を残しました。

レオナルド・ダ・ヴィンチのあだ名は『万能人』でした。

線遠近法(パースペクティヴ)によるリアルな空間と
空気遠近法(スフマート技法)
取り入れて描いていました。

ダ・ヴィンチの作品は臨場感のある、鑑賞している人とその空間とがつながって見えるような
奥行きの臨場感のある絵を描きました。

それまで多くの絵画が、その場面の状況を説明していました。

【最後の晩餐】は画面奥から放射線を描く線遠近法は透視図法ともいいます。
同時代の建築理論家で建築家のレオン・バッティスタ・アルベルティが数学的に理論化しています。

ダ・ヴィンチ最大の壁画作品ですが、修道院食堂の漆喰壁にテンペラで描いたため、
一部の絵の具が剥がれ落ちています。

 

【最後の晩餐】1495年‐98年 油彩、テンペラ 
ミラノ サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院

 

ダ・ヴィンチは線遠近法だけでなく、空気遠近法(スフマート)の技法を駆使していました。

 

【洗礼者聖ヨハネ】1513年‐16年 油彩 パリ、ルーヴル美術館

 

【モナ・リザ】1503年‐06年 油彩 パリ、ルーヴル美術館
「謎の微笑」は
1000分の1~2㎜の絵の具の層を30回前後も塗り重ねた「スフマート」にあります。

 

 

ミケランジェロ・ブオナローティ

 

ミケランジェロ・ブオナローティ(1475年3月6日‐1564年2月18日)

ミケランジェロの代表的な作品として「ピエタ」「ダビデ像」「最後の審判」などです。
絵画や建築などの分野で活躍しましたが、本業は彫刻家として考えていました。

ダ・ヴィンチと同じくルネサンス期の『万能人』と呼ばれています。

生きているうちから芸術家として非常に高い評価を受けていて、西洋美術史最高の芸術家とされていました。
またミケランジェロは教皇やメディチ家など、当時の有力な人間から制作依頼を受けていました。

ミケランジェロは大きな名声を得た後も質素な暮らしを送り、自らの人生を芸術に捧げたそうです。

当時から現在まで多くの影響を与えている芸術家です。

 

『ピエタ』1498年‐1500年 サン・ピエトロ大聖堂

 

『ダヴィデ像』1504年 アカデミア美術館

 

【最後の審判】1541年‐1547年 システィーナ礼拝堂 バチカン

 

【聖家族と幼児洗礼者ヨハネ(ドンド・ドーニ)】1505年‐1506年
フィレンツェ ウフィツィ美術館

ヨセフの足を脚を包む衣がマリアを挟んで明るい黄色から暗い茶へと変換しています。
「カンジャンテ」

 

ラファエロ・サンティ

 

ラファエロ・サンティ(1483年4月6日‐1520年4月6日)

レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロに並んでルネサンス期の三大巨匠に数えられるイタリアの画家で、建築家です。
ラファエロはミケランジェロとは対照的に、美しい女性の肖像画で有名です。
教皇からも弟子からも女性からもモテモテでした。
特に聖母子の画家ともいわれ、たくさんの聖母子像を残しています。

ダ・ヴィンチやミケランジェロの良いところを取り入れ、ルネサンス様式を完成させた画家としても有名です。
そのおかげもありラファエロはその後の時代も最も優れた画家、最も手本とすべき画家と考えられました。

 

【ヒワの聖母】1505年‐1506年 フィレンツェ ウフィツィ美術館
“盛期ルネサンス三大巨匠”中、最も優雅といわれる「聖母の画家」
空気遠近法と三角構図も優雅です。

 

【アテネの学堂】1509年‐1510年 バチカン市国 バチカン宮殿

 

【キリストの変容】1518年‐1520年 バチカン美術館
三大陰影テクニックを全てと遠近法、三角構図を駆使した、ルネサンス絵画の集大成です。

 

 

ルネサンス美術のヴェネツィア派の画家

 

ヴェネツィア派の画家たちは色彩と躍動感を感覚的に表現しました。

 

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ

【ウルビーノのヴィーナス】1538年 油彩 フィレンツェ ウフィツィ美術館

 

【バッカスとアリアドネ】1520年‐1523年

 

ジョルジョーノ

 

【眠れるヴィーナス】1510年 油彩 ドイツ ドレスデン国立美術館

 

【ユディト】1504年 油彩 サンクトペテルブルク エルミタージュ美術館

 

 

巨匠の陰影テクニック

 

【スフマート Sfumato】

イタリア語で「煙ったという意味です。
薄く溶いた絵の具を何層も塗り重ね、境目のないグラデーションを作る
“ぼかし技法”です。

 

【キアロスクーロ Chiaroscuro】

イタリア語で「明暗」という意味です。
明暗法、陰影法全般で特に黒い背景などで
“強烈な明暗対比を生む技法”です。

 

【カンジャンテ Cangiante】

イタリア語で「変換」という意味です。
黄色い物の明暗部を茶にするなど
“色相を変えて明暗表現の幅を広げる技法”です。

 

 

まとめ

 

今回はルネサンス美術についてお話してきました。
盛期ルネサンス期の美術が一体どんなものだったのか、どのような画家がいたのかという
ことを記事にしてみました。

ダヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロなど巨匠達が誕生し活躍した時代でした。

その後の画家のお手本となる作品が多く生まれた西洋美術史の重要な時代だと思います。

では今回はここまでにします!

次回は北方ルネサンスについてお話していきます。

【北方ルネサンス】北方ヨーロッパの美術と有名画家、作品を解説します。