初期キリスト教美術とは? 宗教美術はなぜ発展したのか?について解説します。

こんにちは!絵描きの川原です。

アクリル絵の具で描いた作品

 

皆さんは宗教美術と聞いて、どのようなものを想像するでしょうか?
キリスト教の絵画でいえば磔刑(たっけい)の絵が有名かと思います。

前回のローマの記事では、ポンペイなどの美術を紹介しました。

【古代ローマの美術】代表作やその特徴をわかりやすく解説します

当時のローマ帝国では同時にキリスト教美術も発展していました。

今回は初期キリスト教美術、ビザンティン美術 ロマネスク美術についてお話をしていきます。

初期キリスト教美術の特徴とは

ポンペイの壁画がかなり奔放だったのに対し、
キリスト教美術は、より禁欲的、教訓的です。

ギリシャ、ローマが人間の可能性、意思、感情を評価するのに対し
キリスト教は人間の弱さや罪深さに注目していました。

布教のために発展した芸術は、現在まで残っている作品は多くありません。

313年にローマ帝国のコンスタンティヌス大帝がキリスト教を公認する前よりキリスト教美術は存在し発展していました。
ローマ帝国勢力圏内で発生し、604年の教皇グレゴリウス1世の死まで続きました。

キリスト教を公認するまで、ローマ帝国ではキリスト教は迫害されていました。

当時のローマ帝国では、多神教の宗教を信じる者が多くキリスト教の信者はこっそりと集まり、
『カタコンベ』という地下墓所で集会をしていました。

この頃は若きキリストをモチーフにした『善き羊飼い』が彫刻・絵画・モザイク壁画などのテーマによく用いられてました。

【善き羊飼い】はキリストの象徴だそうです。

 

【泉に集まるハト】は教会に集う信者を表します。

これはキリスト教の話を公然とできない、迫害されていた為
隠語のような形で伝えるため、多くの象徴が生み出されたんですね。

当時のキリスト教徒が生み出した、このような象徴的表現ともいえます。

313年のキリスト教公認後は、大規模な教会が数多く建てられます。
また、文字の読めない人々に聖書の物語を広めるため、
壁面にモザイク画で描かれています。

この頃の教会は大きく分けて、

バシリカ式集中式に分けられます。

↑バシリカ式は、長方形の空間を列柱で仕切り奥に祈りの場所が設けてあるのが特徴です。

 

↑集中式は教会中央に祈りの場があるのが特徴です。

 

ビザンティン美術の特徴


1000年続いたビザンティン

ビザンティン美術とは、4世紀末から15世紀半ばまで(ビザンツ帝国)で栄えた美術です。
ビザンツ美術とも呼ばれます。

同帝国はコンスタンチノポリス(現トルコのイスタンブール)を首都として、
イタリア東部のヴェネツィアや
ラヴェンナまで、地中海東岸を広く支配しました。

キリスト教とギリシャと古代ペルシャの文化が混ざった様なものになっていました。
皇帝を紙として崇めた古代ペルシャの伝統を受け継ぎ、
ビザンティン美術では皇帝を神のような威厳な図像で表現したものが多いです。

絵画では、古代ギリシャ・ローマの技術を受け継いだ華麗なモザイク壁画や、
イコンと呼ばれる礼拝用の板絵(タブロー)が主流でした。

持ち運びができるものも多かったので、教会に行かずに家で礼拝ができました。

 

6世紀に建てられたラヴェンナのサン・ヴィターレ聖堂を飾るモザイク画が代表的な作品です。

サン・ヴィターレ聖堂内のモザイク画

 

ビザンティン美術前期にはモザイク中期にはフレスコ画が中心となりました。

【東方三賢者】(ラヴェンナ 6世紀)

古代美術の立体的で躍動感あふれる自由な肉体表現とは対照的に、
平面的で動きがなく型にはまった描写です。

多くのモザイク画が正面向きで左右対称の動きのない構図です。

【ユスティニアヌス帝と廷臣たち】547年

東ローマ帝国が国教としたギリシャ正教(東方キリスト教)は、8世紀と9世紀に二度の聖像禁止令を出したように、目に見えない神を人の姿で描くのは偶像崇拝を禁じたモーセの十戒に反すると考えました。

そのこともありビザンティン絵画は、聖母やキリストに普通の人間とは違う威厳を与えるため、
あえて類型的に描いたんですね。

ビザンティン美術の時代は、自由に描く権利はほとんどなく
画家には厳しい制約が数多くありました。
『キリストのこの場面はこう描くべき』というようなルールがあったんですね。

1000年もの間、様式が大きく変わらなかった理由もここにあります。

 

素朴な味のロマネスク美術

5世紀の末に西ローマ帝国を滅ぼしたゲルマン人の国々で、
11~13世紀に開花したのが、ロマネスク美術です。

古代文化を吸収し、ロマネスク(ローマ風)と呼ばれる文化を築くまでに500年以上かかりました。
絵画では、ビザンティンの影響を受けた宗教画が描かれましたが、
こちらは壁の漆喰が乾く前に着色するフレスコ画が主流となります。

技術的な未熟さが、かえって素朴な信仰心の強さを感じさせます。

スペインの教会からカタルーニャ美術館に移された壁画【栄光のキリスト】などが代表的な作品です。

聖書や祈禱書などを、飾り文字添えて書き写した『彩飾写本』の挿絵もこの時代に発展しました。

【栄光のキリスト】1123年 フレスコ画

 

 

まとめ


今回は初期キリスト教美術、ビザンティン美術、ロマネスク美術についてお話してきました。

それぞれの特徴をまとめると

・キリスト教徒にしか伝わらない表現
・厳しい制約の中での制作
・ゲルマン化したキリスト教美術の登場

こんな感じですね。

ローマ帝国時代は周りにバレたくないがために、キリスト教徒にしかわからないシンボルや
隠語のような形で伝えるために多くの象徴が生み出される時代でした。

教会にわざわざ行かなくても家で礼拝ができるサイズの礼拝用の板絵(聖人画)なども。

次回はゴシックについてお話していきます。

それでは次の記事でお会いしましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です