【西洋美術史】古代ギリシャの美術についてわかりやすく解説します

こんにちは!絵描きの川原です。

 

アクリル絵の具で描いた作品

今回から【西洋美術史の基礎】をわかりやすく解説していきます。

今までは私が興味のあった時代の美術史についてお話してきました。

前回までは印象主義から始まり新古典主義、ロココ美術と昔に向かって遡って
記事を書いてきました。

このまま記事を書いてもいいかもしれませんが、せっかくなので「西洋美術史の基礎」から書いていきます。

今回は古代ギリシャの美術について、これから順を追ってお話していきます。

 

躍動する肉体をリアルに表現


古代ギリシャは、あまりにも昔のことすぎて興味も持てない方もおられるはずです。

ここは思い切ってこの時代のツボだけを押さえていきます。

【プロポーション重視で躍動的な肉体表現】
古代ギリシャで確立され、ローマ帝国経由でヨーロッパに継承された古典美術の最大は特徴はこれに尽きます。

古代ギリシャ人が崇拝したオリュンポス十二神は、人間と同じ肉体と性別と個性を持った神々です。
逆に言うと、人間の肉体は神々の似姿であり讃えるべき至高の美だと言えます。

古代ギリシャ美術は人間の肉体を、あらゆる古代文明の中で最もリアルに表現しました。
しかも、理想的なプロポーションでです。

 

 

8頭身に隠された『黄金比』


パルテノン神殿の縦横比などで有名な1対1.618(1:(1+√5)÷2)『黄金比』
人体にも応用されました。

例えば【ミロのヴィーナス】の8頭身は、単に頭の長さを身長の8分の1にするのではなく、頭頂からへそまでを頭3個分、へそから踵までを頭5個分の長さにすることで、3対5、5対8という
『黄金比』の近似値を構成します。

石造の建築や彫刻と違い、この時代の絵画は壺絵などを除いてあまり多く残っていないんですね。
それでもクノック宮殿を飾った壁画「百合の王子」は、紀元前16世紀頃のミノア文明時代から
8頭身が理想とされていたことを教えてくれます。

また、ポンペイの遺跡から発掘された壁画群を見ると、古代ギリシャの多神教とリアルな肉体表現がローマ帝国に受け継がれ、より陰影に富んだ描写へと発展していったこともわかります。


ミロのヴィーナス

 

「百合の王子」クレタ島 紀元前16世紀頃

「三美神」ポンペイ 1世紀頃

 

絵画以外の古代ギリシャ【彫刻】

アルカイック期(紀元前7~6世紀)
クラシック期 (紀元前5~4世紀)
ヘレニズム期 (紀元前3~1世紀)

の3つに分けられます。

 

アルカイック期


アルカイック期は古代エジプト美術の影響を強く受けていました。

アルカイック期の彫刻の特徴は軽く微笑んでいて『アルカイック・スマイル』(古拙な微笑み)
少し左足を前に出すポーズです。左右の足に均等に体重がかかるようになっています。

この頃には壺絵も多く登場します。


↑黒い地に赤い図の赤会式と

↑赤い地に黒い図の黒絵式があります。

どちらも壺に塗った黒い塗料を引っ搔いて落とすという技法で作られています。

 

 

アルカイック期のクーロス像

 

 

クラシック期


アルカイック期が200年ほど続いた後に「クラシック期」がやってきます。

クラシック期に入ると、より自然で、均衡のとれた人体彫刻が登場します。

これにより彫像の自由度が広まり、顔や手の表情、衣類の動きが出てきます。

「健全な肉体に健全な精神は宿る」という思想が流行していたため、哲学者でも
体を鍛える者もいたようです。
「ギリシャ彫刻」で画像検索すると筋骨隆々のガチムチの彫刻が出てきます。
みんなムキムキで、おなかが出てる人はいません。

この時代から神に捧げるため、オリンピックが開かれていて、
優勝者には最高の名誉が与えられました。

クラシック彫刻の特徴は片足重心の自然な体の動き「コントラポスト」です。
コントラポストによる自然な人体表現の登場により、彫刻からアルカイックスマイルが消えます。

ミュロン作 「円盤投げ」

エジプト女王ネフェルティティ像

 

プラクシテレス作 ヘルメス像は石膏像でも有名

微笑んでいない理想的なプロポーションの神様の像がクラシック期らしい彫刻

 

フェイディアス作 パルテノン神殿

有名なパルテノン神殿もこの頃の作品です。

 

ヘレニズム期


ヘレニズム期に入ると個人的、人間らしい表現が増えていきます。

この頃はアレキサンダー大王がインドからギリシャにまたがる巨大な帝国を築いた時代でした。

そのためギリシャはかなりのお金持ちになり、ギリシャ文化が世界中に広がります。
そのため個人的に作品を買う人も出てきました。芸術が大衆のものになった初めての時期です。

この頃流行った哲学のストア派もエピクロス派も、「個人の心の平安」を目指したものでした。

この時代は特に彫刻にすぐれた作品が多く、「ラオコーン」「ミロのヴィーナス」「サモトラケのニケ」などが制作されました。
身体を捻じ曲げたり反り返らせることによって、動作を捉えたものが多く、正面よりも多方面から見られることを意識した空間的な広がりを持っています。

 


ラオコーン

特に大蛇と神官・ラオコーンとの戦いを描いた『ラオコーン』は全体を通して非常に躍動感溢れる激しい作品。
人物の表情などの繊細さも兼ね備えている傑作です。

サモトラケのニケ


ミロのヴィーナス

古代ギリシャの彫刻はその後の西洋美術の『お手本』となった為、この時代と同レベルの彫刻がイタリアのルネサンスや新古典主義の彫刻にも見られます。

 

まとめ

今回は古代ギリシャの美術について、当時の思想、時代背景について解説してきました。

古代ギリシャの特徴をまとめると

・シンプルな動きと微笑みのアルカイック期
・自然な人体を表現したクラシック期
・激しい捻じれ、表情で個人を表現したヘレニズム期

という感じです。

 

では今回はここまでにします。

次回は古代ローマの美術について解説します。

それでは次の記事でお会いしましょう!

【古代ローマの美術】代表作やその特徴をわかりやすく解説します